2025.07.11

携帯電話の経費処理を法人・個人事業主向けに徹底解説|仕訳・勘定科目・注意点まとめ

目次

近年、ビジネスにおけるコミュニケーション手段の一つとして「法人携帯」の利用は欠かせないものとなっています。

法人企業はもちろんのこと、個人事業主やフリーランスの方々も業務効率化やコスト管理の観点から、法人契約の携帯電話を積極的に活用しています。しかしながら、携帯電話の利用に関わる費用を「経費」として会計処理する際には、さまざまなルールや注意点が存在し、特に税務上の取り扱いは複雑です。

本記事では、法人携帯の経費処理をテーマに、法人と個人事業主の双方に向けて、具体的な勘定科目の使い分けや仕訳例、税務上の注意点、よくあるトラブルケースまで、実務に役立つ内容を1万文字超のボリュームで詳細に解説します。経理担当者はもちろん、初めて法人携帯を業務利用する事業者の方も理解しやすいよう、具体例や体験談を交えつつ進めますので、ぜひ最後までご覧ください。

法人携帯の経費処理に関する基礎知識

法人携帯とは、法人または個人事業主が事業用として契約する携帯電話のことを指します。

多くの場合、業務用に携帯電話を利用することで、社内外のコミュニケーションが円滑になり、生産性の向上や迅速な意思決定に寄与します。

携帯電話の利用にかかる費用は、業務関連の支出であれば経費として認められますが、私用と兼用している場合には按分計算が必要となり、その取扱いはやや複雑です。

法人と個人事業主では経費処理のルールに若干の違いがありますが、共通して「事業利用であること」が前提です。

1-1. 経費として認められる条件

携帯電話の費用を経費として計上するための最低条件は「業務に関連した支出であること」です。
法人の場合は会社名義の契約が基本で、通信料や端末リース料などを全額経費にできます。
一方、個人事業主は事業利用割合を適切に算出し、私用分を除外する必要があります。

業務利用の根拠として、利用時間の記録や通話内容のメモ、社内ルールの整備などが有効です。
これらは税務調査時の説明資料としても役立ちます。

1-2. 法人携帯と個人携帯の区別

法人携帯は契約名義や請求先が法人であることが多く、経費計上や管理がしやすいのが特徴です。
個人携帯を業務に使っている場合、経費として認められる範囲や証拠の整備がより厳密に求められるため、できるだけ法人契約でまとめることが望ましいとされています。

法人携帯の費用項目と勘定科目の選び方

法人携帯の経費処理で最も基本的なポイントは、費用の種類に応じて適切な勘定科目を選ぶことです。
ここでは代表的な費用項目と勘定科目を詳細に解説します。

2-1. 通信費

携帯電話の「基本料金」、「通話料」、「データ通信料」、「オプション料金」などは通信サービスの利用にかかる費用として「通信費」で処理します。これは最も一般的なケースで、毎月の請求書をもとに経費計上します。

具体例: ある法人が携帯電話の月額料金として8,000円を支払った場合、以下のように仕訳します。
(借方)通信費 8,000円
(貸方)普通預金(現金) 8,000円

2-2. リース料・レンタル料

携帯端末をリースまたはレンタル契約で利用している場合、その端末利用料は「リース料」または「レンタル料」として別途経費計上します。

端末代金を一括購入した場合は資産計上し、減価償却するケースもあります。

具体例: 月々の通信料8,000円に加えて、端末リース料が3,000円かかっている場合は、以下のように分けて処理します。
(借方)通信費 8,000円
(借方)リース料 3,000円
(貸方)普通預金(現金) 11,000円

2-3. 福利厚生費としての扱い

従業員に法人携帯を貸与し、私用利用も一定程度認めている場合は、福利厚生費として処理するケースがあります。
ただし、福利厚生費として認められるためには、社内規程や利用ルールを整備し、業務利用との明確な区分が必要です。

なお、私用分が多い場合には給与課税の対象となるため、税務リスクを避けるために私用禁止または私用分の自己負担ルールを徹底しましょう。

👉「プライベートとの混在」や「名義が社員個人」などのケースでは、経費否認のリスクが発生します。
詳しくは「法人携帯はプライベート利用してもいい?私用混在による経費否認リスクと対策」の注意点をご覧ください。

 

法人と個人事業主別の経費処理のポイント

3-1. 法人の場合

法人契約の携帯電話費用は、会社名義での契約が基本であり、通信費やリース料を全額経費計上可能です。
従業員に貸与する場合も貸与契約書や利用規定を整備し、業務目的での利用を明確にしましょう。

私用分がある場合は給与課税対象になるため、給与天引きや精算を行い、帳簿上で私用部分を明確に区別します。
これにより税務リスクを低減できます。

3-2. 個人事業主の場合

個人事業主は自身の名義で携帯電話を契約することが多いですが、私用・事業用が混在する場合は、業務利用分のみを経費計上します。具体的には、利用実態をもとに按分計算を行い、按分率に応じて通信費や端末費用を仕訳します。

具体例:
月額料金が8,000円で、業務利用割合が60%と判定された場合、経費として計上するのは4,800円です。
残りの3,200円は私的支出として処理し、帳簿上で区別します。

この按分率の根拠は、通話記録、業務日報、業務連絡の記録など具体的な資料で裏付けることが重要です。
税務調査でも合理的な根拠が求められます。

詳しくは「法人携帯で節税はできる?正しい使い方とNG事例」や「個人事業主・フリーランスはスマホ代を経費にできる?」をご覧ください。

法人携帯経費処理の具体的な仕訳例

ここでは法人携帯の費用を経費処理する際の代表的な仕訳例を解説します。
なお、勘定科目は企業の会計方針により異なる場合がありますので、あくまで一般例としてご参照ください。

4-1. 法人が通信費として全額経費計上する場合

(借方)通信費 8,000円  
 (貸方)普通預金(現金) 8,000円

4-2. 法人が通信費+リース料を分けて計上する場合

(借方)通信費 8,000円  
(借方)リース料 3,000円  
 (貸方)普通預金(現金) 11,000円

4-3. 個人事業主が按分して経費計上する場合

(借方)通信費 4,800円 (業務利用60%)  
(借方)私的費用 3,200円 (私用40%、経費外)  
 (貸方)普通預金(現金) 8,000円

私的費用は経費計上できず、帳簿上明確に分ける必要があります。

4-4. 端末を購入し資産計上する場合

購入時  
(借方)器具備品 100,000円  
 (貸方)普通預金(現金) 100,000円

減価償却費(耐用年数3年と仮定)  
(借方)減価償却費 33,333円  
 (貸方)減価償却累計額 33,333円

減価償却費は通信費とは別勘定で処理します。

👉詳細な勘定科目の使い分けについては、以下の記事で詳しく解説しています。
法人携帯の勘定科目は何?通信費・リース料・福利厚生費の使い分けガイド」をご覧ください。

税務調査に備えるための証憑管理と注意点

5-1. 領収書・請求書の保存

経費処理の基本は証憑管理です。携帯電話の利用明細、請求書、領収書は必ず保存し、誰がどのように使ったかを明確にできる状態にしておきましょう。

特に個人事業主は私用と業務の按分が重要であり、通話記録や利用時間表などの資料も揃えておくことが望ましいです。

5-2. 利用実態の記録・管理

法人では、社内規程で携帯電話の利用ルールを策定し、利用目的や私用禁止ルールを周知徹底しましょう。
個人事業主も業務利用時間や通話内容を簡単にメモしておくことが、税務調査時の説明に役立ちます。

5-3. 按分計算の合理性

私用と事業用の按分計算は税務上の重要ポイントです。
合理的かつ実態に即した按分率を設定し、その根拠資料を揃えておかないと、経費否認や追徴課税のリスクが高まります。
過度に業務利用率を高く申告することは避けましょう。

5-4. 消費税の取り扱い

法人携帯の費用は原則として課税仕入れに該当し、消費税の仕入控除が可能です。
ただし、私用部分の消費税は控除できませんので、按分に応じて消費税額も調整する必要があります。消費税の計算も按分率に基づいて行いましょう。

詳しくは「経費処理をスムーズにする運用術」や「法人携帯の領収書・請求書の保存義務と注意点」をご覧ください。

法人携帯経費処理に関するよくある質問と回答

Q1. 法人名義の携帯を社員に貸与し、私用がある場合はどう処理すべきですか?

A1. 私用分は給与課税対象となるため、会社は私用料金相当額を社員から回収するなどの運用が望ましいです。
帳簿上も私用分と業務利用分を明確に区別し、給与計算に反映させましょう。

Q2. 個人事業主ですが、携帯電話の通信料のうち何割を経費計上してよいですか?

A2. 事業利用の実態に基づいて合理的に按分してください。
例えば、利用時間や通話内容などを記録して60%が事業用であるなら、60%を経費計上します。

Q3. 端末の購入費用は全額経費にできるのでしょうか?

A3. 一般的に、端末購入費用が10万円以上の場合は「器具備品」として資産計上し、耐用年数に応じて減価償却します。
少額であれば経費として一括処理できる場合もあります。

Q4. 法人携帯の経費を減らす節税ポイントはありますか?

A4. 格安SIMの法人向けプランを利用したり、不要なオプションを見直すことが効果的です。
また、リース契約の見直しや複数回線の一括管理による割引交渉も有効です。

詳しくは「格安SIMや法人向けプランを活用する方法」をご覧ください。

法人携帯経費処理を適切に行うためのまとめ

法人携帯の経費処理は、法人・個人事業主に共通して「事業利用であること」が根本のルールです。
勘定科目の正しい選択、仕訳の正確な実施、証憑類の適切な保存、そして按分計算の合理性の確保が求められます。

法人の場合は、会社名義の契約を基本とし、私用分は給与課税の対象になるため管理を徹底しましょう。
個人事業主は事業用と私用の利用割合を合理的に按分し、根拠資料を保存しておくことが何より重要です。

税務調査のリスクを避けつつ、コスト管理を最適化するために、日頃からの管理体制整備と業務フローの見直しをおすすめします。今回の記事が、法人携帯の経費処理に関わる実務に携わる方々の一助となれば幸いです。

もし具体的な仕訳や制度の運用に疑問がある場合は、税理士や会計士などの専門家に相談することも検討してください。