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個人向けスマートフォン市場が飽和する一方、法人携帯市場は堅調に成長を続けています。
テレワークやDX推進、5G・6Gなどの次世代通信技術の普及が追い風となり、企業の業務効率化や競争力強化を支える重要なインフラとして位置づけられつつあります。
本記事では、最新データをもとに法人携帯市場の現状・成長動向・利用形態の変化・キャリア別競争・技術トレンド・セキュリティ課題・将来予測を網羅的に解説します。
導入検討中の企業はもちろん、法人向け通信事業に関わる方にとっても必見の内容です。
法人携帯市場の現状|市場規模と成長動向
法人携帯市場は、個人向けスマホ契約が飽和するなか、企業のデジタル化ニーズに支えられて着実に拡大しています。
特に、テレワークの普及や業務効率化のためのモバイル化が進むことで、法人契約の比率は年々高まっています。
この章では、契約件数・普及率・企業規模別の導入格差など、最新の市場データから現状を解説します。
個人市場の飽和に対する法人市場の拡大
2023年3月末時点で法人向けスマートフォン契約数は1,357万件に達し、全体に占める法人比率は11.6%を記録。
2017年の10.1%から1.5ポイント上昇しており、個人市場が頭打ちになっている一方、法人市場は堅調な伸びを見せています。
出典:MM総研「MM総研 法人スマートフォン契約数調査(2023年3月末)」
普及率の企業規模別格差
2025年現在、大企業と中小企業の法人携帯普及率には約20ポイントの開きがあります。
- 大企業:44.4%(2024年43.4%から微増)
- 中小企業:24.8%(2024年25.0%から微減)
この格差は、導入コストや運用管理体制の整備状況が企業規模によって異なることが背景にあります。
大企業はセキュリティやMDM管理の投資余力があり、早期から導入を進めている一方、
中小企業では「コスト負担が重い」、「管理担当が不在」といった理由で普及が進みづらい状況です。
利用形態の多様化|社用携帯とBYODの併用
法人携帯の運用方法は、単純に「会社から端末を支給する」だけではなく、
従業員が私物端末を業務利用するBYOD(Bring Your Own Device)など、多様化が進んでいます。
コスト削減や柔軟な働き方を支えるメリットがある一方、セキュリティリスクへの懸念から導入を見直す企業も増えています。
BYODから社用携帯回帰の流れ
- 社用携帯の利用:31.4%(2025年)
- BYOD利用:21.8%(2025年、2024年23.3%から減少)
ICT総研の調査によると、2024年から2025年にかけてBYOD利用率は減少。
コロナ禍以降、一時的にBYODが広がりましたが、情報漏洩やマルウェア感染リスクを考慮し、改めて「社用携帯を支給して管理する」方向へ回帰する動きが強まっています。
出典:MMD研究所「2025年法人向け携帯電話 利用実態調査」
業種別の利用形態
業種によっても利用形態は異なります。
例えば、営業やフィールドワークが多い不動産・物流業では社用携帯比率が高い一方、ITベンチャーなどはBYODを許容するケースが多い傾向です。
キャリア別の競争状況|docomoが依然トップ
法人携帯市場では、大手キャリア3社(docomo・SoftBank・au)がシェアを奪い合う構図が続いています。
docomoが依然トップを維持しているものの、近年はSoftBank・auが法人特化プランや管理サービスを拡充し、シェアをじわじわ伸ばしています。
キャリア別シェアの推移
- docomo:41.9%(2024年43.1%から微減)
- SoftBank:25.4%(2024年25.3%から微増)
- au:24.4%(2024年24.3%から微増)
docomoはカバー率や法人専用サポート網で優位ですが、競争は激化しており、料金プラン・MDMソリューションなどの付加価値が差別化のポイントになっています。
出典:DIME「社用ケータイの導入率、大企業と中小企業でどれくらい差がある?」
中小企業向けMVNOの台頭
さらに、格安SIMを提供するMVNO事業者も法人向けプランを拡大しています。
大手キャリアほどのサポートはないものの、コストを重視する中小企業からの需要は増加傾向です。
👉大手通信キャリア別で見る法人携帯の比較については「法人向けの携帯電話はどこがおすすめ?大手通信キャリアを徹底比較!」をご覧ください。
技術トレンド|5G普及とDX推進が需要を拡大
法人携帯市場の成長を支えている大きな要因が、5Gの普及とDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進です。
高速大容量通信や低遅延ネットワークにより、モバイル端末の役割が単なるコミュニケーション手段から「業務プロセスを変革するツール」へと進化しています。
5G活用の具体例
- 製造・物流業:IoTデバイス連携でリアルタイム監視
- 医療分野:遠隔診療やAI診断支援
- 建設業:遠隔操作による重機管理
- 金融・商社:大量データのリアルタイム共有
DX推進と法人携帯
DXに取り組む企業では、法人携帯を活用した業務アプリケーションの導入が進んでいます。
例えば、SFA(営業支援システム)や勤怠管理アプリをスマートフォンで完結させることで、業務のスピードと効率を大幅に向上させています。
セキュリティとデバイス管理の強化
法人携帯が業務の中心的なツールになるにつれて、情報漏洩や不正利用のリスクが拡大しています。
そのため、MDM(Mobile Device Management)やゼロトラストセキュリティの導入が急務となっています。
MDM導入の現状
MM総研によると、会社支給スマートフォンに占める内線ソリューション導入率は21.8%、モバイルデバイス管理の導入率は23%に達しています。
導入が進むことで、端末の一括設定・紛失時の遠隔ロックなどが可能となり、企業の管理負担が軽減されています。
企業が重視するセキュリティ機能
- アプリケーションのインストール制御
- 遠隔ワイプ(紛失・盗難時のデータ消去)
- 位置情報管理の強化
- 通信ログの監視・分析
出典:MMD研究所「2025年法人向け携帯電話 導入実態調査」
端末選択の傾向|iPhoneが法人市場で優勢
法人携帯市場では、セキュリティの強固さや管理のしやすさからiPhoneが圧倒的に選ばれています。
Androidもコスト面で有利なものの、MDMとの親和性やOSアップデートの継続性を理由にiPhoneを選ぶ企業が増えています。
- iPhone:60.2%(2024年57.1%から増加)
- Android:27.7%(2024年29.3%から減少)
iPhoneが選ばれる理由
- セキュリティアップデートが長期間提供される
- MDMの対応が統一されている
- 操作性・UIが統一され教育コストが低い
👉iPhoneを法人契約するメリットについては「法人携帯にiPhoneを導入するメリット」をご覧ください。
将来展望|2030年に向けた法人携帯市場の予測
法人携帯市場は、テレワークの定着や働き方改革、さらには6GやAI統合の進展によって今後も拡大が見込まれています。
中小企業の普及率が大企業並みに引き上がることで、契約件数はさらに増加するでしょう。
今後の成長要因
- 中小企業の普及加速(現状24.8% → 大企業並みへ)
- ハイブリッドワーク定着による需要拡大
- 6G技術の導入(2030年頃から普及開始)
- AI連携による業務効率化の高度化
通信サービス業界全体の市場規模は2030年までに15.46兆円(+17.4%)に達すると予測され、法人携帯はその成長を牽引する分野となる見込みです。
市場が抱える課題と解決策
成長が見込まれる法人携帯市場ですが、導入・運用に伴う課題も少なくありません。
コスト負担、セキュリティリスク、端末管理の複雑化などをどう解決するかが鍵となります。
主要な課題
- 端末および通信費の最適化
- データ漏洩・不正利用のリスク管理
- 多様なOS・端末の一元管理
- 従業員のITリテラシー不足
解決策の方向性
- クラウド型MDM・EMM(Enterprise Mobility Management)の活用
- 統一的なセキュリティポリシーの策定
- 従業員向けセキュリティ教育の徹底
- 通信プラン・端末の定期的な見直しでコスト削減
結論|法人携帯市場は今後も拡大し続ける
法人携帯市場は、個人市場の飽和とは対照的に、企業のDX推進を支える重要な基盤として拡大を続けています。
特に、テレワークやハイブリッドワークの普及が法人携帯の需要を押し上げ、5G・6G・AI連携により新たな業務価値を創出するでしょう。
企業は「単なる通信コスト削減」ではなく、業務効率化と競争力強化のための戦略的な投資として法人携帯を位置づける必要があります。
FAQ|法人携帯市場に関するよくある質問
法人携帯の導入を検討している企業からは、費用対効果や導入方法、BYODとの比較など、さまざまな疑問が寄せられます。
ここでは、法人携帯市場に関するよくある質問とその回答をまとめました。
導入前に押さえておくべきポイントを簡潔に理解できる内容になっています。
- Q1.中小企業でも法人携帯を導入するメリットは?
- A1.通信コストの明確化、業務用と私物の分離、セキュリティ強化、経費処理の簡素化などが挙げられます。
- Q2.BYODと社用携帯、どちらがコスト的に有利?
- A2.短期的にはBYODが安いですが、情報漏洩リスクや管理コストを考慮すると社用携帯の方が長期的に安定します。
- Q3. 格安SIMの法人プランは大企業にも向く?
- A3.サポートや品質面で制約があるため、コスト重視の中小企業向けがメインです。大企業はキャリア直契約が主流です。
重要な市場指標まとめ
ここまで解説してきた内容を、主要な市場指標として簡潔に整理します。
これらの数値を押さえることで、法人携帯市場の全体像や成長性がより明確に理解できます。
- 法人携帯普及率:大企業44.4%、中小企業24.8%
- 法人比率:11.6%(2017年から1.5ポイント上昇)
- 契約数:1,357万件(2023年)
- キャリアシェア:docomo 41.9%、SoftBank 25.4%、au 24.4%
- 端末シェア:iPhone 60.2%、Android 27.7%
- MDM導入率:約23%
この市場は今後も企業のデジタル変革の中心として拡大が見込まれます。
法人携帯の導入や見直しを検討しているなら、最新トレンドと将来の市場予測を踏まえた戦略的判断が必要です。